おまけ
2023.01.06
夜間急病センター50周年に寄せて想うこと(記念誌投稿文)
札幌市耳鼻咽喉科医会 会長 佐野 宏行
私が開業してもうすぐ30年になります。夜間急病センターには1~2か月に一度のペー
スで出向しており、計200回を超えました。開業医にとって、言わばアウェーで面識のな
いスタッフと仕事をこなすことは良い刺激になります。
30年近く前の話になりますが、札幌市耳鼻咽喉科医会第二代会長の故福田栄三先生は、
医師休憩室に何度もお見えになり「今日の当番は佐野先生でしたか。宜しくお願いしますね」
とお声掛けくださいました。医師会の仕事が終わってからそのためだけに立ち寄られたの
だと思いますが、札幌市民の健康にこんなにも気遣いされているのかと感服致しました。
時を経て、一昨年より私も札耳会の会長となりましたが、未だに福田先生の真似事も出来てお
りません。が、この稿を書くにあたり気づいたことがあります。福田先生はセンターの無い時
代を長らく経験されており、センターの存在が如何に重要なものであるかを深くお考えになっ
ていたということです。システムが当たり前に整えられた時代に育った私は、改めて全国に先
駆けた札幌方式のセンター開設に携われた先輩医師の方々や札幌市医師会職員の方々のご尽力に
頭が下がる思いです。
札耳会では平成19年に「公平輪番制」が敷かれ、65歳未満の会員ほぼ全員に出向の義務が課さ
れています。新楯実第六代会長を中心とした英断ですが、会員の理解を得て今も遵守されていま
す。全員の出向は他科の先生方には信じ難いこいとかもしれませんが、当科の急性疾患は可視的
に診断が可能であり、日常診療よりも診断に苦慮するストレスが少ないという特徴があるからか
もしれません。また、異物や鼻出血などはその場で完結する場合があり、やりがいも感じられま
す。処置が難しいケースや入院が必要な重篤疾患もありますが、研修医の研鑽のために札医大や
北大が快く引き受けてくれるという伝統があります。
札耳会の公平輪番制は当面続けていけるはずですし、札幌市民や医師会にご迷惑をお掛けする
ことは少ないと思われます。しかし問題は新型コロナウイルスの影響です。急病センターの耳鼻
科来院数も一般耳鼻科来院数もマスク生活による感冒全体数の減少と受診抑制の影響が強力で、
未だ低迷しております。新規開業もこの3年間でなんと1名だけで、人材難が進行する可能性があ
ります。日本臨床耳鼻咽喉科医会が当科の診療報酬増額を厚労省に働きかけているようですが、
私たちも公私ともに努力していくしかない状況なのだと思います。そしてこれからも他科の先生
方のご理解とご協力をお願いできれば幸いです。